【新説】塩分摂りすぎ=高血圧の原因ではない!

日本人は平均寿命がながく、それは日本食が健康にいいからだと世界的に認識されています。

そのため、日本食は海外でも人気なのですが、ひとつ欠点とされていることがあります。それは、塩分の摂取量が多いことです。

和食に欠かせないのが醤油はもちろん、日本の食事には味噌汁、漬物など何かと塩分の多い食品が多いです。

このような食習慣からか、日本人には高血圧になっている人がとても多いです。高血圧が原因で病院に通っている人は年間800万人もおり、潜在的な高血圧の患者は3000万人もいると言われています。

自覚症状がないので放置している人も多いのですが、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞を引き起こします。こうしたことから「静かなる殺し屋」という異名をとる、怖い病気なのです。

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高血圧になる原因は塩分の摂りすぎということなので、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2010年版)」で、食塩摂取量の1日あたりの目標量は、成人男性は9g未満、成人女性は7.5g未満、そして高血圧で治療をしている人は1日6g未満にすることをすすめています。

WHO(World Health Organization=世界保健機構)も、1日当たりの塩分摂取量は5グラム以内にすべきと推奨しています。

ところが、実際の平均的日本人の1日当たりの食塩摂取量は、平成25年版「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、2013年における成人の1日あたりの塩分平均摂取量は男性が11.1g、そして女性が9.4gでした。

確かに、日本人は塩分摂りすぎと言えるかもしれませんね。

塩分の摂りすぎが高血圧の原因になる理由

それでは、塩分の摂りすぎが高血圧の原因になるのでしょうか?

塩は、化学的には塩化ナトリウムですが、このナトリウムが過剰に体内にあると高血圧の原因になってしまうという説が一般的です。

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ナトリウムは人体の中で細胞液に含まれており、神経や筋肉に働きかけます。細胞液中のナトリウムが一定の濃度をこえた濃度になってしまうと神経や筋肉はうまく活動できなくなるため、人体はナトリウム濃度が常に一定になるようにしようとします。

体内のナトリウムの量が一定を超えてしまうと、のどが渇き、水が飲みたくなります。そして大量の水を飲むと、血管内のナトリウムを薄めようとして血液の量も増大します。

血管内を流れる血液量が通常状態よりも多くなり、それが定着してしまうと、血管にかかる負担も大きくなります。これがまさに高血圧です。

通常、体内のナトリウム量の調節のために、余分なナトリウムは腎臓の働きで尿として排出されますが、腎臓が弱っていたり、腎臓の能力を超えたナトリウムを摂取してしまうと、排出がうまくいかずに、血中にナトリウムが残ったままとなってしまいます。

塩分の摂りすぎは高血圧に関係ない?

上で述べたことが、高血圧の原因になる通説ですが、高血圧になる原因は、ナトリウムが体外に排出できないことが問題なのであり、摂取量そのものは関係ない。という説もあります。

つまり、ちゃんとナトリウムが排出できれば、塩分の多い食事をいくらとっても問題ないという説です。

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そもそも、塩分摂取量が高いと高血圧になりやすいということを最初に提唱したのは、アメリカのダール博士という方で、1954年のことでした。

ダール博士は高血圧の発症率の高い、日本の青森を含む世界5地域の事情について調査し、塩分摂取量が多い地域の住民が高血圧になりやすいという傾向を発見し、その後、同じくアメリカのメーネリー博士がラットを使った実験で、多量の塩分を摂取させたラットの40%が高血圧になったという研究報告をしたことから、塩分の摂りすぎ=高血圧の原因という説が確立されたのです。

しかし、この実験で40%のラットしか高血圧にならなかった。という事実に着目し、塩分の摂取量が多いことが高血圧の原因とは必ずしもならない。という説を唱えたのが日本人研究者で高血圧研究の権威としられる青木氏です。

青木氏は、高血圧の原因はナトリウムが体外にきちんと排出できるかどうかの問題であり、摂取量には関係ないという説を唱えました。それの検証実験が1988年に日本を含む5か国で1万人を対象に行われ、やはり、食塩の摂取量と高血圧になりやすさについての因果関係はないという研究結果が得られました。

その後も検証実験は多くの研究者により行われていますが、塩分の摂取量を減らしたからといって、高血圧になる可能性を減らすことはできない。という研究成果が多く報告されています。

1987年にアメリカのミラー博士が行った実験で、通常血圧の人に、1日の塩分摂取量を9.2グラムから4グラムに減らすという食生活を行ってもらったところ、血圧に変化がなかった人がほぼ半数で、逆に上がってしまった人も観察されました。

そういうわけですので、減塩したからといって血圧の低下につながるとは限らず、むしろ摂るべきナトリウムの量が不足してしまってはかえって健康維持に逆効果になりうると指摘する専門家もいるのです。

塩分も気にしたいがカリウムも気にしたい

ナトリウムの排出がうまくいかないことが高血圧の原因と書きましたが、上で書いたように、ナトリウムを体内で一定量保つことは、健康には不可欠なことです。筋肉や神経の働きを整える役割があるからです。

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一方、ナトリウムとともに、こうした役割を担うのがカリウムです。体内ではナトリウムとカリウムがこの役割を担っており、このバランスが保たれてなくてはなりません。

カリウムが不足すると、脱力感を感じるほか、さらにひどくなると不整脈の原因になります。また、ナトリウムの排出がうまくいかないのは、腎臓の働きが弱っていることが原因と書きましたが、カリウムが不足すると腎臓を弱め、腎炎にかかりやすくなるのです。

ですので、カリウム不足も高血圧の原因になりかねないのです。

カリウムは不足している人が多いと言われるミネラルです。食生活の変化で含まれる食品をあまり口にしなくなったからと言われています。また、水に溶けやすいことから摂取が難しいミネラルであることも原因です。

カリウムが多い食品としては果物、野菜、そして魚介類があげられます。

果物ではバナナが特にカリウムが多く、100グラムにつき360ミリグラムのカリウムが含まれています。

野菜ではきゅうり、アボカド、タケノコがカリウムを多く含んでいます。

カリウムは水に溶けやすいミネラルですが、タケノコのカリウムはゆでてもあまり減らない特徴があり、カリウムを意識して摂るときにはおすすめの食材です。食物繊維も豊富で便秘にもいいですね。

魚介類では、にぼし、するめ、さわらなどにカリウムは多く、その他にもカルシウムや鉄分といったミネラルも摂取できます。

カリウムを摂れる食品はいろいろな食べ方がありますが、今回はバナナとアボカドを使ったスムージーを紹介します。

バナナ、アボカド、小松菜、豆腐が材料です。

バナナ、アボカドに加えて小松菜もビタミンが多く、豆腐は女性ホルモンの成分に近いイソフラボンが多く含まれています。

カリウムを摂るというだけでなく、美肌作りにもいい。女性向けのスムージーになります。

繰り返しになりますが、高血圧は自覚しにくく、ある日突然心臓病や脳梗塞となってしまう人も少なくありません。健康診断で血圧が高めと言われた人はもちろん、そうでない人も必要なミネラルを考えながら食生活を考えたいですね。

高血圧の原因は腎臓機能の働きですので、問題がある方は医師の指導にしたがってください。

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